家族信託を利用するうえでのデメリットとは? 事前に仕組みやリスクについて把握しておこう!

家族信託を利用するうえでのデメリットとは?

近年、信頼できる家族に財産管理を託す契約である「家族信託」が注目を集めています。

認知症時の資産凍結や相続トラブルなど、老後の財産管理対策として非常に有用な家族信託ですが、何でもできる完璧な手段というわけではありません。

利用を検討するうえで必ず知っておくべきデメリットがあることも事実です。

そこで今回は、家族信託の概要からメリットやデメリットについてまとめてみました。 家族信託を締結してから後悔することがないよう、実際に利用を検討するうえで是非参考にしていただければ幸いです。

目次

家族信託とは?どのような制度なの?

まずは家族信託がどのような制度なのかを見ていきましょう。

家族信託とは一言でいうと 「自分の財産を信頼できる家族に託し、自分が決めた目的に沿って管理・運用を任せる」ことのできる制度です。

高齢化が進む今、認知症による資産凍結など、将来自分自身で財産管理ができなくなった場合への対策として利用されるケースが増えてきています。

詳細はのちに説明しますが、元気なうちに家族信託契約を交わしておくことで、仮に将来、認知症などにより意思能力を喪失してしまった場合でも、ご家族間で柔軟に財産の管理・運用・処分を行うことができるようになります。

家族信託について詳しく解説した記事はこちら

家族信託の基本的なしくみ

家族信託は、主に以下の登場人物によって構成されています。それぞれの役割は下記の通りです。

家族信託の役割
  • 委託者(本人)……財産を預ける(信託する)人
  • 受託者(家族など信頼できる人)……財産を預かり(信託されて)、管理・運用する人
  • 受益者(恩恵を受ける人)……信託財産から生じる利益を得る人
家族信託の基本的なしくみ

委託者は、元気なうちに「財産をどのように管理してほしいか」など自分の意思や希望を反映した信託契約を、受託者との間で締結します。

そして受託者は、契約締結と同時に財産の管理権限を持ち、信託契約の内容に沿って管理を行います。管理の中で生じる利益については、受益者(委託者)が受け取る形となります。

こうした仕組みにより、仮に将来、委託者が認知症を発症したとしても、資産が凍結されることはなく、財産を託された受託者の手で管理を継続していくことができるのです。

近年では「認知症による資産凍結」への備えだけではなく、「相続対策」や「事業承継」「親亡き後問題」など、様々な問題を解決する手段としても注目を集めています。

認知症時のリスクについてくわしく解説した記事はこちら

家族信託のメリット

ここまでは家族信託の概要や仕組みについてご紹介しました。

では実際に家族信託を利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

家族信託を利用するメリットは主に下記の 4 つが挙げられます。

家族信託を利用するメリット
  • 認知症などになっても家族の手により財産管理を継続できる
  • 思い通りの資産承継を実現できる
  • 成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができる
  • 相続により共有名義となることに起因するトラブルを回避できる

ここでは主なメリットについて解説します。

認知症などになっても財産管理を継続できる

財産の所有者である委託者の意思能力に左右されることなく、ご家族間で財産管理を継続できるという点は、家族信託の最大のメリットです。

通常、認知症や病気などにより意思能力を喪失し、何も対策していなかった場合、法律上預貯金の入出金や不動産の売買契約といった財産に関する法律行為ができなくなり「資産凍結」と呼ばれる状態になってしまう可能性があります。

しかし、家族信託を行い自分の資産管理を家族に託しておけば、その後本人の意思能力が低下・喪失したとしても、その効力が否定されることはないため、上記のような事態に陥ることはありません。

あらかじめ家族信託を締結しておくことで、元気なうちから万が一の時まで信頼できる家族の手により継続的に財産管理を行うことができる点は、家族信託の利点だといえるでしょう。

思い通りの資産承継を実現できる

家族信託には遺言代用機能があるため、思い通りの資産承継を実現することが可能です。

遺言代用機能とは、自分の死後に資産を承継する先を信託契約の中で自由に指定できる機能です。「誰に、どのように承継させるか」をあらかじめ定めることができるため、遺言と同様の効果を得ることができます。

またこの機能を用いれば、遺言単独では対策することのできない二次相続以降の承継先についても、何世代にもわたって指定することができるのです

相続トラブルを回避し遺族の負担を軽減する手段としても活用することができる点は、家族信託の魅力のひとつです。

※ 後継ぎ遺贈型受益者連続信託といいます

成年後見制度よりも柔軟な財産管理ができる

家族信託を利用すると、成年後見制度よりも柔軟な財産管理を行うことが可能です。

意思能力が十分ではない人の財産管理方法の一つに成年後見制度がありますが、成年後見制度は家庭裁判所の監督のもと本人(被後見人)の財産を守ることに重点が置かれるため、運用や処分といった本人の財産を減らすことに繋がる行為は基本的にできません。

どのように管理・運用しているかについても、定期的に家庭裁判所へ報告しなくてはならず、場合によっては管理方法の指示を受けることもあります。

成年後見制度について詳しく解説した記事はこちら

その点家族信託であれば、家庭裁判所が関与することなく、契約を締結したその時から、本人の希望に沿って定めた信託目的に従って自由に財産を管理・運用・処分することができます。

不動産の買換えといった資産組み換えや賃貸物件の管理・修繕、株式投資などについても、あらかじめ信託契約書内で定めておけば、信託法の許容する範囲で行うことが可能なのです。

上記のような観点から、成年後見制度よりも家族信託を利用した方が柔軟な財産管理が実現できるといえます。

相続により共有名義となることに起因するトラブルを回避できる

不動産を共有名義で所有することは多くのリスクを伴いますが、家族信託を利用することで、共有名義による相続トラブルを回避できます。

法律上、不動産の売却や大規模な工事の際には、共有者全員の同意が必要です。 また契約時には共有者全員が立ち会い、署名・押印をし印鑑証明書などの本人確認書類を準備しなくてはなりません。

この時、もし名義人のうち一人でも反対する人がいたり、遠方に住んでいるなどで連絡がつかない人がいる場合は手続きを進めることが難しくなります。

さらに、共有者に相続が発生すると、その財産が故人の法定相続人に分配されるため、一つの不動産を相続する人が増えていってしまうリスクもあります。

しかし家族信託で不動産を信託すると、名義上土地の所有権が受託者に移るだけでなく、意思決定権限も受託者に集約されます。 そのため、上述したように共有者の意見が合致しないことによるトラブルが発生することなく、受託者の判断で不動産の管理・運用・処分を行うことができるのです。

またこの時、共有者それぞれを受益者として指定すれば、不動産売却対価や賃料収入といった、不動産から生まれた利益を分配することも可能です。

いざ売却しようとした時に、不動産が塩漬け状態になってしまうなどのリスクを回避する手段としても、家族信託は有用だといえます。

家族信託のデメリット

前項で紹介したように、家族信託は非常に柔軟性が高く利用するメリットも多い制度ですが、家族信託で全てが解決するというわけではありません。

利用を検討するうえで、事前に知っておくべき注意点がいくつかあるのも事実です。

ここからは、次の8つについて解説します。もちろん場合によってはデメリットはこれらに限られませんので、検討する際は専門家とよくご相談ください。

家族信託を利用する際のデメリット
  • 意思能力を喪失した後では利用することができない
  • 損益通算ができない
  • 節税対策にはならない
  • 成年後見制度でしかできないこともある
  • 税務申告の手間がかかる
  • 受託者が長期にわたり拘束される
  • 遺留分侵害請求の対象となる場合がある
  • 相談時に一定の費用がかかる

それぞれについて見ていきましょう。

意思能力を喪失した後では利用できない

家族信託の利用を検討する上での最重要な条件は 「意思能力」があることです。

具体的に言うと、委託者が 「自分がどのような財産を持っていて、誰に託したいか」「どのように管理してほしいか」といった意思表示ができるかということです。

家族信託は信託契約を締結することにより開始しますが、意思能力が十分でない者が締結した契約は、民法上”無効”になってしまうため、意思能力を喪失した後では家族信託を利用することはできません。

認知症の症状が出始めていると診断されてしまったとしても、信託の組成が直ちに不可能になる訳ではありませんが、進行のスピードは人によって異なるため、時間的猶予がどれくらいあるか全く予想できないものです。

実際にお客様の中でも、初期症状が出始めてから急速に認知症が進んでしまったがゆえに、信託契約を組成できなかったケースがあります。

以上のことから、家族信託を検討されている方は、利用しようと思った時に手遅れになる前に、早急に対策を進めていくことをおすすめします。

またその逆に、すでに認知症という診断を受けていた場合でも、症状が軽度であったことから問題なく家族信託を組成できたというケースがあるため、「もう認知症を診断されているから利用できないかも」と悩まれている方も、あきらめずに一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

損益通算ができない

所得税の申告にあたり、赤字の所得を他の所得から差し引くことで課税される所得を減らすことを 「損益通算」といいますが、家族信託では損益通算を行うことができません。

信託財産に収益不動産が含まれている場合に、信託財産から生じる不動産所得にかかる損失は、なかったものとみなされてしまうため、信託された不動産所得は、信託されていない収益不動産の黒字から差し引くことができないのです。(租税特別措置法第 41 条 4 項の 2)

そのため、大規模な修繕を行う予定のある不動産を信託しようと考えているような場合は注意しなければなりません。

収益不動産を信託すると、通常よりも多くの所得税を支払うことになる可能性があるため、家族信託を組成する際は必要に応じて税理士先生に相談するなどして、何を信託すべきか慎重に判断するようにしましょう。

節税対策にはならない

家族信託を利用しても直接的な節税効果は期待できません。

家族信託は認知症対策としてや、将来の財産の承継先を自由に設計できる制度としてはメリットがありますが、家族信託を組成したからといって本来払うべき税金が減るというわけではないからです。

どのように家族信託を設定するのかによって、課税される税金の種類もかわってくるため、家族信託の形と税金との関係をしっかりと把握しておくようにしましょう。

成年後見制度でしかできないこともある

成年後見人の仕事の大きな特徴として 「身上監護」があります。

身上監護とは、意思能力を喪失した本人に代わって、住居確保や生活環境の整備、介護・福祉施設への入居、医療・入院に関する契約などの手続きを行うことですが、家族信託は財産管理がメインであるため、受託者にはこの「身上監護権」がありません。

そのため、身上監護部分についてどうしても支援が必要な場合は、「任意後見制度」と併用するなどの手段を取る必要があります。

ただ、一般的にはご家族の方が代わりに手続きをしている現状も多いため、身上監護権だけのために成年後見制度を利用するかどうかについては慎重に判断することが大切です。

また、成年後見制度は申立てをしてから手続きが完了するまでに、非常に時間を要します。ですが、時間を掛けさえすれば利用することは可能であるため 「本当に必要」になった時に利用を検討するという選択をしても良いかもしれません。

いずれにしても「家族信託」「成年後見」それぞれの特性をきちんと理解した上で、ご家族の状況に合った選択ができるようにしましょう。

家族信託と成年後見制度の違いについて詳しく解説した記事はこちら

税務申告の手間がかかる

家族信託を利用し信託財産から年間 3 万円以上の収入がある場合、受託者は翌年の 1 月 31 日までに税務署に対して信託計算書や信託計算書合計表を提出する必要があります。

また、信託財産に不動産所得がある場合、毎年の確定申告において不動産所得用の明細書のほか、信託財産に関する明細書を別途作成して添付しなければなりません。

手間と感じられるかどうかについては個人差が生じる部分ではありますが、こうした税務申告を自分自身で行うことに不安がある方は、税理士などに前もって相談してくおくことが大切です。

長期にわたって受託者が拘束される

家族信託のメリットの一つに、財産を何代にも渡って承継させることができる点を挙げましたが、裏を返せば、長期間にわたり契約が続くことはデメリットにもなりえます。

信託契約が開始すると、受託者は契約内容に従って財産管理を行う必要があるため、仮に二代先、三代先と承継先を指定した場合、契約期間中何十年もの間、受託者は信託契約に拘束されることになるからです。

さらに受託者は、契約の期間中毎年一度、信託契約に係る帳簿をはじめとする書類を作成し、その内容を受益者に対して報告する義務も発生します。

長期にわたり連続する信託は、契約が複雑化し思いがけないトラブルが発生するリスクがあるうえに、上記のように契約に該当するご家族の負担となる可能性もあるため、家族信託を検討する際はこの点を考慮したうえで話し合いのもと設計するとよいでしょう。

専門家に相談する費用がかかる

家族信託を組成する際に発生する費用は、決して安いとはいえません。

コンサルティング費用から、契約書の作成費用、公正証書化するうえでかかる費用、登録免許税など、各手続きにおいて費用が発生します。

特にコンサルティング費用の相場は信託する財産の内容や相談先により様々ですが、場合によっては 100 万円を超えることもあります。

一見、費用が高いと感じる人もいるかもしれませんが、家族信託を組成することによって得られる効果を考えると、利用する価値は十分にあるといえるでしょう。

遺留分侵害額請求の対象となる場合がある

法定相続人に最低限保障された相続財産のことを 「遺留分」といいますが、遺留分を侵害するような内容で家族信託契約を結んでしまうと、遺留分侵害請求をされる場合があります。

また、平成 30 年(2018 年)9 月 12 日に東京地方裁判所では、遺留分の潜脱を目的とした家族信託契約を、公序良俗に違反するため無効とした事例もありました。

この事例からもわかるとおり、遺留分の侵害は相続トラブルに発展するケースが非常に多いため、信託契約書作成の時点で遺留分に配慮した設計にしておくとよいでしょう。

そのほか、信託で財産を承継させる予定のない相続人には、別途、遺言や生命保険により財産を承継できるようにしておくなどの対策を講じることも有用です。

デメリットをおさえて家族信託を活用する方法とは?

ここまでは家族信託のメリットやデメリットについて紹介しました。

記事を読んでいただいている方の中には「柔軟に財産管理ができる制度であることはわかったけど、デメリットがいくつもあるなら積極的に利用しない方がいいんじゃないの?」などと疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

ただ実際のところ、前項で紹介したデメリットは、事前に適切な対策を講じることで解決できる場合があります。

ここでは、デメリットを最小限におさえて家族信託を利用する方法をご紹介します。

家族信託について事前に理解を深め話し合っておく

まずは、将来相続人となりえる人も含めた契約当事者全員が、デメリットも含め家族信託について正しく理解しておくことが重要です。

よくあるケースとして、受託者が「税務申告の手間がかかること」や「長期にわたり拘束されること」といったデメリットを知らないままに契約してしまい、後に家族間でトラブルが起こることなどが挙げられます。

しかし、事前にそれらについて関係者全員が理解し納得することができていれば、上記のようなトラブルを未然に防ぐことが可能です。

またそれだけでなく、相続税のリスクを踏まえて「この財産については遺産分割協議で決めて欲しい」などといったことまで全員で話し合えていれば、遺留分侵害請求などに発展せずに済むかもしれません。

当事者全員の正しい理解・納得こそが、将来の紛争を防ぐための一番の手段だといえます。事前に情報を集めたうえで、ご家族同士できちんと話し合っておくようにしましょう。

他の制度と併用する

前にも述べたように、家族信託で財産にまつわる全ての問題が解決するわけではないため、ご家族の状況に応じて他の制度と併用するなどの対策を講じることが大切です。

たとえば身近な親族がおらず、介護施設へ入所する必要があるものの、契約手続きなど身の回りの生活を自分一人で行うことが事実上困難なケースなどが挙げられます。

こうした場合、家族信託だけでは対策として不十分であるため、身上監護権のある任意後見制度の併用をおすすめします。

また、家族信託で承継先を指定できるのは「信託財産」のみです。

信託財産に含めなかった財産については遺産分割協議の対象となるため、家族信託の契約時には、信託契約とは別に遺言書を作成し、信託財産以外の財産の承継先まで定めておくようにしましょう。

家族信託に精通した専門家に相談する

デメリットにも挙げたとおり、家族信託の実務に精通した専門家はあまり多くないのが実情ですが、利用を検討する際は必ず専門家に相談するようにしましょう。

家族信託に精通している専門家であれば、ご家族の状況やニーズに合わせて、デメリットにも考慮した信託契約を設計してくれるはずだからです。

まれに「専門家に頼らずに自分で設計する」と仰る人もいますが、家族信託は法務や税務など様々な領域の知識が必要不可欠であるため、自分自身で契約することはおすすめできません。

ご家族の想いや希望を実現した形で家族信託を組成するためにも、知識や経験が豊富な信頼できる相談先を探す手間を怠らないようにしましょう。

家族信託を利用する場合はデメリットまで正しく理解しよう!

いかがでしたでしょうか。 今回の記事では、家族信託の概要や、メリット・デメリットなどについて解説しました。

家族信託の仕組みを正しく理解し活用することができれば、自分の望む形での財産管理や承継を実現させることができます。

しかし、繰り返しお伝えするように、家族信託だけで叶えたい目的を全て達成できるとは限りません。

そのため、家族信託を利用する際にはメリットだけでなくデメリットもきちんと把握し、その上で「自分や家族の状況に家族信託の利用が適しているか」「どのように活用すればデメリットを抑えることができるか」などを検討することが大切です。

ファミトラでは、家族信託にまつわるサポートを行っております。

弊社の専門スタッフがご家族様のご状況・ご要望をヒアリングしながら一番最適な信託の形をご提案いたします。

また家族信託に限らず、他の制度を利用した場合のメリット・デメリットも併せてご説明いたしますので「将来について対策したいけど、何から考えたら良いのかわからない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にファミトラまでご相談ください。

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ファミトラでは【老後の資産管理】に詳しい専門家に相談できる無料セミナーをご用意しています。

この記事を書いた人

小牟田尚子 小牟田尚子 家族信託コーディネーター®

化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。

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